舞の一人旅 夏

冒険心の強い舞は、流行りのソロキャンプにも興味を持ち、今では重いザックを背負って1人で何度もキャンプに出かけていた。

ある日、動画サイトでキャンプ場巡りをしていると「南の島格安旅行」の広告が目に入った。

「あっ、これ! よし、南の島でキャンプだ」

今度は海を渡って一人旅を試したくなった。思い立ったらすぐ行動するのが舞である。

早速ネットで航空券と宿を予約した。

数日後、夏の風が心地よい中、舞は小さな島に足を踏み入れた。

海の色が青く、空気が澄んでいる。彼女は初めての、海を渡った一人旅に緊張していたが、空からこの美しい景色を観た瞬間からそんな気持ちは消え去っていた。

舞は海のそばの小さな民宿を予約していた。朝食付き格安の宿だ。此処を拠点に海辺にテントを張り南国キャンプを満喫するつもりだ。

舞は予約していた宿に荷物を置くと、テントを抱えてすぐに海へ向かった。

白い砂に透き通るような海、胸の鼓動が高まり1人でにやけながらウキウキしていた。

テントを張り終えると水着に着替え、しばらく波の音を聞いていた。すべてのストレスが吹き飛ぶようだ。モクマオウの木の隙間から太陽の光が差し込み、テントに不思議な影を映し出す。時折り小さな白い蟹がすぐそばにやってきて、走り去って行く。彼女は心地よい疲れを感じながらも泳いだり、砂浜で寝そべったりしてゆっくりとした時を過ごした。

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夕方、舞は島の商店街にある小さな居酒屋に行ってみた。泡盛を試してみたが、旅行誌に載っていた良い香りに感じることはできなかった。「くさい、なにこれ」と思ったのが本心だ。もったいないのでちびりちびりやっていると、良い気分になってきて、緊張がほぐれ、開放的な気分になっていた。地元の人たちと話したり、珍しい料理を試したりした。

「へ〜これ豚の尻尾、食べれるんですね」

泡盛やビールのおかげで、気分は高まり満足感でいっぱいだ。彼女はその夜、テントの中で海の音に包まれながら眠りについた。

「おはよう、朝ごはんできてるからね」

宿に戻ると宿のおばさんが笑顔で迎えてくれた。

「テントで寝たの〜? 寒くなかった? 此処には悪い人はいないけど女の子だからね〜、何かあったら大きい声をだせば、おじさんが飛んでいくから心配はないけどね~」

舞のテントは宿から1分もかからないような場所に張ってある。冒険とは程遠いが、気分は最高だ。

「ありがとうございます、いただきま〜す。」

白いご飯に海藻の味噌汁、スパムと卵焼き、ひじきと煮物の小鉢、漬物が付いていた。

舞には、充分満足できるメニューだ。

朝食の後、シャワーを浴びて宿にあるレンタサイクルを借り、町を探索し始めた。古い石垣に囲まれた御嶽を訪れたり、美しい景色を見たりした。彼女は今までとは少し違う文化に触れることができ、此処にきてから感動がいっぱいだ。マーケットで買い物をし、初めてみる魚や食材に驚きながらも、この地で自分も生活しているかのような錯覚を覚えていた。

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やがて夜になって舞は砂浜のテントの前で小さな焚き火台を出し、缶ビールを片手に炎を眺め始めた。昼のうちに買っておいた地元のお惣菜を並べて写真を撮る。

「さいこ〜っ!」思わず叫んでしまった。

波の音と焚き火の炎がコラボして舞の気分をさらに盛り上げた。

2本目のビールを開けた時、人の声がして砂浜に数人が降りてきた。

「あれ、キャンプしているよ」

男の声がした。舞は少し不安になったが宿はすぐそこだし、何かあったら大声をだせばおじさんがきてくれる。シカトしていよう。

「こんばんは、一人でキャンプしてるの?」

さっきの声とは違う人が話しかけてきた。

「こんばんは、そこの宿に泊まっているんです」

「へ〜、今のテントはこんなに小さくて、かっこいいね、俺がボーイスカウトだった時は三角の重くてよ、あ、ごめん」

「俺、そこの宿のしんせき、そこのおじさんの弟の息子、変な人じゃないから大丈夫だよ」

俺たち、ここでこれから飲み会するから少しうるさいかもしれんけど、ごめんね」

少し離れた場所で他の人たちがシートを広げて、宴会の準備をしていた。

「よかったら参加する?」

あとで女の子も来るから気が向いたら来ればいいよ」

しばらくして女の人の声がして、舞いを誘いにきた。

「よかったら一緒に飲みませんか?いつも同じメンバーでつまらないし」

「ありがとうございます。」

ありきたりの「どこから来たの?」から始まり、すでに缶ビール2本を飲み干している舞は、酔いも手伝ってすぐに打ち解けることができた。

数日後、舞は海でシュノーケリングをしていた。この前の浜辺の宴会の時に知り合った女性は以前にダイビングのインストラクターをしていて、舞を誘ってくれたのだ。

海の中には、美しい珊瑚礁やカラフルな魚たちがいた。彼女はこの美しい自然に驚嘆し、この時間を永遠に忘れることはないだろうと思った。

「観光で食べている島だけど、観光産業の開発で本当に大切なものが形を変えていくんだよね、見た目はリゾート地で豪華になって行くけど自然を壊しながら自然を自慢して商売にしている、何か矛盾していて複雑だよね」

旅行の最後の夜、島で出会った人たちと一緒にビーチで夕日を見た。彼女はこの旅行で新しい友人を作り、思い出に残る夏の旅を過ごしたことを感謝していた。今夜は荷物の整理もあるので宿に泊まる予定だ、宿のおばさんが島料理を作ってくれるらしい。

夜になり、おばさん手作りの料理がテーブルの上、所狭しと並んだ。魚や野菜の天ぷら、昆布や野菜と骨付きの豚肉の煮込み、珍しい魚の刺身などがずらりと並んでいる。やがてみんなもやってきて賑やかな送別会になった。

この騒ぎぶりはまるで昔からの知り合いのようだった。

明日、東京に帰ることを思うと少し寂しいが、初めて蚊帳の中の気分は、何か安心感に満ちていて、天井のヤモリに見守ってもらいながら深い眠りに着いた。

この島で過ごした夏の思い出は、舞にとって一生の宝物となった。彼女は再びこの美しい島に戻って来ることを夢見て、南の島一人旅を終えた。

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