初恋のメール

太陽の光が川面にキラキラと輝く夏、小学6年生のゆうやは焚き火の薪にする流木を拾いながら、川沿いを歩いていた。夏休みに入り、家族でのキャンプは彼が最も楽しみにしていたことだった。それは自然と遊び、さまざまな新しい発見に出会う絶好の機会だ。

ふと、ゆうやの目に小石を集めて遊んでいる同じ年頃の少女が映った。少女は はるかという名前で、ゆうやと同じように家族でキャンプに来ていた。はるかは小学5年生で、ゆうやの視線に気がつくと少し照れくさい表情を浮かべながら、小石を手に取り、水面に投げ入れた。

ゆうやは思わず足を止め、はるかに笑顔で声をかけた。「こんにちは、何をしているんですか?」

はるかは驚いたように振り返り、そして照れくさそうにしながら笑顔で答えた。「あ、こんにちは。私、小石を集めているんです。川で遊んでるんですよ。」

小学生の2人の会話は照れながらの敬語で始まった。

ゆうやは笑いながら近づき、適当に小石を拾い「それは楽しそうですね、僕は焚き火用のまきを拾っているんですよ」
そろって水面に小石を投げたりしているうちに2人は自然に会話するようになった。「そろそろ戻らないと」

はるかは少し大人びた雰囲気を持っていて、ゆうやは彼女のその雰囲気に惹かれていった。

夕食後、彼らは川にかかった橋の上で待ち合わせた。夕陽が沈み、星が輝き始める中、2人はお互いの学校の話や友達の話題で盛り上がり、笑い合った。

「明日もここで会おうよ、あと2日間だけだけど一緒に遊びたいな」と、ゆうやははるかに微笑んで言った。

はるかも微笑みながら、頷いた。「うん、私も遊びたい、明日は家族で朝から山登りするから、戻ったらここで待ってるね。」

お互いの家族のもとに戻り、その夜ゆうやは普段の学校で感じたことのなかった不思議な感覚に包まれ喜びと興奮で眠りについた。

翌日、太陽が頭上から少し西寄りに傾き始めた頃、ゆうやは父親と箱メガネ片手に川で遊んでいた。

「こんにちは、ゆうやくん」おどろいて振り返ると水着にTシャツを着たはるかがいた。
「あ、こんにちは、早かったんだね」

「あ、友達?じゃあ、お父さんテントに戻ってちょっと昼寝するから、気をつけてな」

箱メガネで川の中をのぞいたり、水のかけ合いをして川で遊んだ。

「明日、帰るんだよね、また来年ここに来るかな?」「友達になったしるし、握手しよう」

また来年会う約束をして2人は握手した。

その夜、ゆうやは生まれて初めて胸が締め付けられる様な寂しい気持ちに襲われた。はるかの姿が頭の中を巡る、もっとはるかと遊びたい話したい、妙な興奮と高鳴る鼓動を感じながら眠りについた。

そして、3日目の朝、別れの時が訪れた。ゆうやはメモを取り出し、住所と名前を書いた。そしてはるかたちのテントまで走った。

「おはようございます」
きちんと挨拶をしてはるかに手渡すと、彼女は驚いたような表情で受け取った。

「これって、ゆうやくんの住所?」

ゆうやは照れくさそうに笑って答えた。「来年あえるかわからないし、これからも友達でいたいなって思って、まだスマホ持ってないから紙のメールしようよ、郵便のメール」

はるかは嬉しそうな笑顔で頷いた。「うん、いいよ」「じゃあ私からメール送るね」

そして、それぞれの家族はそれぞれの日常に戻り、数日が過ぎた頃

「ゆうや、郵便来てるよ女の子から」

「やった、メールきた!」

新学期が始まり、学校から帰ると郵便受けを覗くのがゆうやの日常に加わっていた。

それから小学校卒業まで2人の文通メールは続いた。

初恋は郵便メール